仙台牛タンというのは美味しいものです。素朴な疑問を最初に掲げますが、なぜ美味しいのでしょうか。
この記事では、その「仙台牛タンはなぜ美味しいのか」という謎について掘り下げてみたいと思います。
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もくじ
仙台牛タンはなぜ美味しいか?その肉の秘密
- 仙台牛タンの定義とは
- 仙台牛タンに使われる肉の産地
- 仙台牛タンに用いられる部位
仙台牛タンの定義とは
基本的な前提を一つ、改めて述べておきますが、仙台牛タンというのは「仙台牛タンという呼び方をされる料理、あるいは定食一式」の名前であって、けして「仙台牛の牛タン」という意味ではありません。
先に説明しますが、“仙台牛”には明確な法的定義があります。正規の登録をしている農家が宮城県内で育てた黒毛和種であること、協議会が並べた市場などに出品されたものであること、そしてA5またはB5ランクに格付けされていること、です。黒毛和種というのは4種類ある和牛の品種のうちの一つで、つまり仙台牛は和牛の中でも特別な存在である、ということです。
ですがこのことと仙台牛タンとは直接的には関係がありません。そもそも仙台牛タンの始まりはアメリカ産の牛肉が仙台で余っていたことに始まるとも言い、当初から「仙台牛を使った牛タンの料理」ではないのです。
仙台牛タンに使われる肉の産地
実際、今現在仙台に存在する仙台牛タンの店で使われる牛タンのうち、最も多くの比率を占めるのはアメリカ産です。高級店でもそうです。ですが、別にそれは「安物のアメリカ産牛タンを、まるで仙台牛の牛タンであるかのように偽って観光客向けに売っている」などという話ではないのです。アメリカ産牛タンは、理由があって選ばれています。
では、なぜ美味しい仙台牛タンはアメリカ産が多いのか。アメリカで一般に普及している牛の飼育方法は、穀物を与えて育てる方法。いわゆるグレインフェッドです。これと対になる概念が牧草飼育、グラスフェッドですが、グラスフェッドの方が引き締まった、低カロリー・高タンパクな肉になります。グレインフェッドは、脂の乗った、柔らかい肉質を作り出す効果があります。
そして、あとでも述べますが仙台牛タンは、牛タンという基本的には牛肉の中でも硬い部位を、厚切りにして食べるのが特徴です。ですから、高級なグラスフェッドの肉を使うより、グレインフェッドの方が“仙台牛タンには向いている”のであり、つまり仙台牛タンがなぜ美味しいかに深く関わっているのです。
ちなみに、牛タンは世界的にも不足しがちな部位であるので他にはオーストラリア産、ニュージーランド産などの牛タンも仙台牛タンの外食店では用いられていますが、それらもやはり多くは日本向けの、「グレインフェッドの牛タン」が選ばれています。
仙台牛タンに用いられる部位
ひとくちに「牛タン」とは言いますが、もちろん牛からとれる舌の部分がすべて「仙台牛タン」として食膳にのぼるわけではありません。牛タンは牛一頭から1キログラムほど取れますが、まず、ふつう表面の皮の部分は取り除きます。そこからまたさらに四つに分類できます。
タン先、タン中、タン元、タン下です。タン先とタン下は硬いので、焼いて食べるには向かず、主にはタンシチューなどの煮込み料理に用いられます。仙台牛タンには一般にタン中、タン元が用いられます。
美味しい仙台牛タンを作るにあたって具体的に牛タンのどの部位をどう仕入れてどうカットするかは店次第ですが、中でも特徴的な店が一つあります。『伊達の牛たん本舗』です。
ここでは、タン元から10~15㎝ほどの部位を、「芯たん」と呼んでおり、この名前で商標登録をしています。この部分は牛タンの中でも特に柔らかく、それを厚切りにして用いることが「なぜ美味しいのか」の理由の一つになっているというわけです。
仙台牛タンはなぜ美味しい?調理法に秘伝がある
- 肉を寝かせて熟成する
- 仙台牛タンの切り方
- 味付けの種類
- 仙台牛タンの焼き方
肉を寝かせて熟成する
仙台牛タンはなぜ美味しいのかに踏み込む前に、まずは一般論として、家庭でもできる牛タンの基本的な仕込み方を説明しましょう。
まずは表面に切れ込みを入れ、そして塩を振ります。ラップに包み、24時間から48時間程度、冷温で熟成していきます。このとき、できれば一般的な家庭用冷蔵庫の温度よりは若干高い程度の温度にするとよいです。
このときの塩の選び方ですが、ミネラル分が多いあら塩を用いるのが(一般的な食卓塩よりも)良いと言いますが、名店のやり方をひとつご紹介します。『たんや善治郎』では、塩を細かく挽いて「粉引き塩」にして仕込みに用いています。挽くことでまろやかになり、口当たりがよくなって、牛タンへの浸みもよくなるのだそうです。
ご家庭で、脂身の少ない赤みの多い牛タンを用いる場合は、塩に味の素を少し加えるという手もあります。好みではありますが、一度は試してみるのもいかがでしょうか。
また、他の技法としては、短時間で塩浸するために粉の塩ではなく塩水を用いる、硬い牛タンを柔らかくするために重曹を用いる、といったようなテクニックもあります。
伝統スタイルの店。ほとんど機械を使わず、職人の手作業にこだわります。
仙台牛タンの切り方
仙台牛タンは厚切りが基本といっても実際の切り方は店次第・またメニューによって色々とありますが、一般的なテクニックとしては、表裏に、表裏で違う位置になるように切れ込みを入れます。
それから、一つの例として名店のテクニックを紹介してみましょう。『元祖味太助』では、スライスした一枚一枚に、表面だけそっと切れ込みを入れていきます。深く切ってしまうより、そうした方が味がしみ込みやすいのだそうです。
味付けの種類
大きく分けて、たれ派、塩派、それからこれは後発なのですが『牛たん一福』で考案されたとされる味噌漬けのものがあります。
塩派はその名の通り塩だけを使いますが、どれくらい塩を振るか、が難しい問題で、店ごとの秘伝でもあります。たれも各店の秘伝があるものであり、簡単に再現できるものではない奥が深い世界となっています。
ちなみに、塩焼き専門の店もあれば、三種類ともメニューに置いている店もありますが、ご家庭でお焼きになる場合はいずれを選ぶにせよ好みで選んで構いません。
仙台牛タンの焼き方
これも店によって色々ではありますが、基本的には炭火が一般的です。フライパンで焼くよりも脂が落ちやすく、仕上がりがよくなります。
よく言われるのは「強火で一気に」というもので、遠赤外線によって牛タンの表面を瞬時に硬化させ、表面をパリッと、中はジューシーに仕上げるというのが、仙台牛タンがなぜ美味しいかという問題の答えの一つとなっています。
これも一例を挙げましょう。名店『司』では、ナラ炭という炭を仙台牛タンの炭火焼きのために仕入れています。多くの場合木炭というのも輸入品なのですが、司が仕入れているナラ炭は国産で、普通の木炭よりも強い火力が出るのだそうです。それで、「より強火で、より一気に」焼き上げ、美味しい仙台牛タンが仕上げられるというわけです。
また『閣』という名店では、すべての牛タンを注文後に、特別な技術を持った職人が手焼きしています。「外カリ中ふわ」がこの店の特徴です。
【閣】地元の仙台っ子に美味い牛タン屋を尋ねると高確率で名前が挙がるという、屈指の名店です。
仙台牛タンがなぜ美味しいかはサイドメニューも関わっている
- 麦飯
- テールスープと漬物と味噌南蛮
麦飯
麦飯というのは薄く圧縮した大麦を白米に炊き込んだものです。
そもそもの経緯としては大麦が安価だから仙台牛タンの女房役に導入されたとも言いますが、それだけで何十年の伝統になるというものではありません。
麦飯は仙台牛タンと合わせるとなぜ美味しいか。それは噛めば噛むほど味わいが出てきて、甘くなるという特徴があるためです。
テールスープと漬物と味噌南蛮
次にテールスープ、尻尾を長時間かけて煮込んだもの。コラーゲン豊富でコクがあり、多くの店ではネギが加えられていて、仙台牛タンの味わいを受けるものとして重要な役割を担います。
ほかに重要とされるのは、例えば有名店『ねぎし』では「おみ漬け」と呼ばれるお新香と、「味噌なんばん」を用いています。おみ漬けは山形青菜と呼ばれる庄内の特産品を漬け込んだ、優しい味わいの漬物。
味噌なんばんは脂肪を燃焼させる効果のあるカプサイシンを含み、ピリッとした辛さが口元をさっぱりさせて箸休めに最適です。
仙台牛タンがなぜ美味しいのかのまとめ
いかがでしたでしょうか。仙台牛タンは、なぜ美味しいか。要点をまとめると、以下のようになります。
- 肉の選び方に秘密がある。グレインフェッドがベターで、結果アメリカ産が選ばれやすい。
- 肉の部位にも意味がある。店によって違いはあるが、柔らかい部位を用いている。
- サイドメニューにも伝統的なやり方と、それが選ばれてきたなりの理由がある。
- もちろん、調理法にはもっとも重要な意味がある。